新卒で入社したのは父が経営していたグループ会社でした。
その会社には、とても個性的な先輩方がたくさん在籍していました。
そのなかでも百貨店のテナントさんを中心に担当していたT先輩がいました。
T先輩は、営業だけでなく、石の仕入れ、デザイン開発、作りに渡り精通していてとても尊敬できる人でした。
私が在籍していた会社は、ファッションジュエリーを得意としていたので、センターストーンがあるカラーストーンやダイヤモンドジュエリーの取り扱いがほとんど無かったです。
↑こちらがファッションジュエリーのサンプル画像です。ネット上から拝借しました。
↑こちらがセンターストーン付きのサンプル画像です。こちらもネット上から拝借しました。
T先輩は作る製品には、今まで会社で扱ったことがないようなものでセンターストーンを使ったジュエリーですが、シンプルなんですが、細部に拘りがあるような玄人好みのものが多かったです。
T先輩の担当していた取引先が、ファッションジュエリーよりもセンターストーンを使用したジュエリーを好んでいたのもありますが、インターネットの環境がまだ整っていない時期に、先輩がいろいろな情報をご自分で集め、アレンジしてデザインを考えジュエリーに仕上げていきました。元々、父の会社はジュエリーの工場でキレイなものを作れる環境があったのもありますが、先輩が職人さんと何度も打ち合わせをしているところを見ることがしばしばありました。
石を仕入れ、何度も打ち合わせをして、出来上がったジュエリーたちをT先輩はとても愛おしく見ていたのを覚えています。
得意先に訪問して、T先輩の作ったジュエリーを薄利で販売してしまうと、T先輩に叱られたことを思い出しました。
「このジュエリーを作るのに、交渉を重ねて石を仕入れて、職人さんに何度も原型を作り直してもらってやっと製品になったんだ。それをこんな値段で売ってくるなんて・・・・」
その時は、私も駆け出しの頃で、商品への思い入れよりも、キレイなものをお客様に気に入って仕入れていただき、エンドユーザーにすすめてもらう。その繰り返しで私の営業成績をあげていくことしか考えていなかったので、T先輩の考えがわからなかったんです。それから、独立して、一つひとつ商品を作るようになると、仕上がったジュエリーに愛着が出てきて、本当に気に入ってくれた方にお譲りできればって気持ちが強くなってきました。やっとT先輩に少し近づけたかもと思うようになりました。独立してからT先輩にお会いすることはほとんどなくなり、もう20年以上お会いしていないと思います。風のうわさではT先輩は今も同じ業界にいらっしゃるそうです。いつかどこかでT先輩にお会いしてお話ができれば嬉しいです。
私も、自分で作ったジュエリーに惚れ込む、T先輩のようなスタイルでこれからも商売を続けていきたいと思います。
ジュエリーを見ながらT先輩のことが頭に浮かび、文章にしてみました。分かりづらい文面になってしまいましたが・・・・
サンワカツキ 代表 若月兵衛
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